アーティストインタビュー「TSUKA」後編
いくつかのバンドに参加し活動するミュージシャンは数多くいれど、15個ものグループに参加し、
そのすべてが現在進行形で活動しているというミュージシャンはそうそういない。
エレキギター、ガットギター、アコースティックギター、更にはバイオリンまで弾きこなし、
パンク・ハードコア、歌もの、ドゥーム・ストーナー、ジプシーなインストなどあらゆるジャンルを行き来する超人、TSUKAさん。
その驚異的な活動ペースと強烈な演奏に、大阪のライブハウスに出入りしている人ならきっと「あ、あの人!」ピンとくるでしょう。
西岡です。三国ヶ丘FUZZで店長、難波BEARSでPA。
絵を描くのが好きです!
バンド→「コロコロボンボンズ」でDr&Vo「楽しんでいこうや西岡と狂ったチワワズ」で
Gt&Vo。最近はソロライブもやってます。
-ノラ一味の話から-
TSUKA:僕がノラ一味におる確率は今は7割くらいかな。僕が他のバンドのライブ先決まっててもノラ一味はライブ受けるんで(笑)ノラ一味ではドラムもやったこともあるよ。コロナ禍が一番酷かった頃、ドラムのトシアキが会社の部下に「あんま遊んだらアカンぞ」とか言わなあかん立場らしくて、そんなん言ってるのに自分はライブするのおかしいからってライブが出来なくなって。その間は僕がドラム。毎日個人練習してた。SOCORE FACTORY(※南堀江のライブハウス。同じビルにリハーサルスタジオを併設している)の上で。あの時スタジオもほとんど閉まってたから…普段はLMスタジオ(※四ツ橋のリハーサル・レコーディングスタジオ)メインで使ってるねんけど、LMも閉まってて。
-練習するところも無いと…。ライブなんてもってのほかって空気でしたね。
TSUKA:一番ひどい時は戦国大統領と茨木アナーキーしかやってなかったんちゃうかな?僕もずっとライブしてはいたけど「楽しかったです!」とかはあんまりよう言わんというか、そういう発信はでけへん雰囲気やった。それでもライブジャンキーみたいな演者やお客さんはいるから、そういう人たちが戦国とアナーキーに来て、出会った繋がりは今でも残ってるかな。
-僕もコロナ禍の真っ最中に店長になったので、毎日が「どうすればいいんやコレ」でした(笑)
今はほぼ毎日ライブされてるんじゃないですか?
TSUKA:ライブは2日にいっぺんとかかな。(と言いながら室内のカレンダーを見る)あ、明日も明後日もや(笑)
-TSUKAさんのスゴいところって、そんな数のライブをしながらも、自身のライブがない日に普通にライブ見に来てますよね。こないだも僕がHOKAGEでライブする時「練習行く前にちょっと寄った!」て現れてびっくりしました(笑)
ひとつ気になってたのですが、320くん(大阪で活動するシンガーソングライター)のバンドに参加する際、ギターの時とバイオリンの時がありますよね。
TSUKA:あれはふたつとも320の曲をやってるけど、全然別物やからね。OHYEAH!のほうは「バンド」だから、リズムなんかも320の弾き語りに合わすんじゃなくて、あれはバンドありきでアレンジしてて。&TKZのほうはまず320の弾き語りがあって、それに全員がアドリブで乗っけてる。
OHYEAH!も元々は僕バイオリンじゃなくて。というか始まったきっかけがあって。ちょうどコロナ禍が始まったころで、戦国大統領がツアーバンド呼んでガッツリ組んでたイベントが、ツアバンが全部来れません、みたいな事態になってしまって。それで戦国大統領のみんなが、せっかくやからスペシャルな事しようやみたいな事を企んでたんやろうね。僕はその日ノラ一味でライブやったから戦国入ったら「TSUKAさんもメンバーなんで」って言われて。おう、320の曲ならまあできるけど…って感じで。ほんでその時、Gotta Neal Experimentの緒方くんもギターで、サックスのサカちゃんもおって、何回かライブしてるうちに「緒方くんのギターがあるんならギター2本も要らんのとちゃうか?」と思って。30年ぶりにバイオリンを弾くことにした。
-コロナ禍で変なスイッチ入るというか、そういうのが生まれていく空気感よくわかります。僕もブッキング組んでてコロナでキャンセルが出た場合は「僕が代わりに出るから気にすんな!」とかいって代打でライブしてたら1日に二回出なきゃいけない日とかあって、しんどかったですけど「ここまで来たら普段できない事をとことんやったろ!」ってどこか楽しんでた記憶があります。
TSUKA:基本的には「一緒にやりたいなー」て言われたら嬉しいし、僕も好きな人やったらやりたいから。そう言えば僕の弾き語りも320きっかけでやることになってんな。酔ってる隙に「TSUKAさん、弾き語りで僕のイベント出てくれませんか?」て言われて、僕もこんな調子やから「おう!ええで~!」って(笑)
-容易に想像がつきます(笑)
TSUKA:んで家帰って、寝て、起きたらもうタイムテーブル送られて来てて。共演見たらガッチガチのメンツやん!って。LOVEDLOVEDのバリヤンさんや、岡山や高松の僕の友達やったりがいるイベントにぶっ込まれてて、慌ててアコギ買いに行って。
-やっぱり買いにいくところから!
TSUKA:でもそのおかげで、コロナ始まっても僕一人でもライブハウスの枠埋めれたし…初めはめちゃくちゃやったけど、ライブの内容もそれなりには納得できる感じになってきてるから。一人はツアーもよく行けるしね。一人はすぐOKできるから…ライブ会場行くまでの計画も一人だけやから好きな計画立てて、好きな電車乗って。好きな景色見て。
-電車が好きなんですか。
TSUKA:電車は好き。電車が好きっていうか、電車の旅が好き。電車、列車…好きなんはめっちゃ昔からやねん。初めて一番遠くまで行ったのとかも憶えてて、小学校の時に、静岡の金谷って所なんやけど、そっから蒸気機関車が出てるねん。大井川鐵道っていって。それに乗りたいなって思ってそこまで行って。高校の時も、学校終わってその足で青春18きっぷで東京行ったりとか。何日かして学校に帰ってくる。親もそのへん分かってくれてて、ありがたかった。
-小学生の頃からすでに、現在のTSUKAさんの行動力とバイタリティの片鱗が見えますね。
ある意味、その集大成がこないだファンダンゴで開催されていた『TSUKA FEST』(※TSUKAさんの参加バンドすべてが一堂に会するイベント)ですよね。
TSUKA:あれ僕の企画じゃないからね。
-えっそうなんですか!?(笑)
TSUKA:そう、加藤さん(※堺ファンダンゴの店長)が「TSUKAちゃんのバンド全部いっぺんに見たいわ~」って言うから。その話が4月くらいだったかな?んで、でもメンバー全員の予定合わせるってなったら、メンバー30人近くおるから。
-30人全員と堺ファンダンゴの予定が空いてる日を探すと!
TSUKA:それで11月の候補日の中に全員出れるでっていう日があって、その日に。確かに僕が主役やってんけど、自分の中では僕じゃなくてそれぞれのバンドが主役やと思ってたから、演奏時間も短くしたりしないで各バンド30分とって。僕の中では全部普段通りやった。たまたま次のバンドも僕演奏かー、みたいな(笑)そもそも、僕はほとんどのバンドで脇役やからね。演奏と転換の繰り返しで財布取りに行く時間もないから、はじめにドリンクカウンターに5000円預けて、そっからお酒買いながら演奏してた。最後ファンダンゴのビールも缶チューハイも全部売り切れて、ああ良かったな、みたいな(笑)みなさんのおかげです。
-みんないける日があってよかったです。僕もその日見に行きましたが、当たり前の事なのに、毎回ステージにTSUKAさんいるのがどういうわけかだんだん面白くなってきて…。あの日、歴史的な瞬間を見るべく本当にたくさんの人が駆けつけてましたよね。すごいイベントでした。TSUKA FESTのTシャツを着てる人、ライブハウスでもよく見かけます。見かけるたびに「あの日、あの場所にいましたか!」って勝手に嬉しくなります(笑)。でも同じライブハウスの人間からすると「うわ~その手があったか~」と思わされちゃいました。ファンダンゴの加藤さんはさすがですね。いやまぁ…思いついても実際オファーかけれるか?わかんないですけど(笑)
TSUKA:実は、HOKAGEの佐野はそれより前に同じ事を言ってくれててんけど…。コロナで話が流れちゃって。だから佐野にはファンダンゴでこういうことやるよ、って連絡して。そっから話進めていった。
-(そんなイカレたブッカーが2人もいる大阪のライブシーンは安泰ですね…)
ロケッツ、HOKAGEとの繋がりはさきほど聞かせてもらったんですが、ファンダンゴにはどういう経緯で出るようになったんですか?
TSUKA:10代の頃にオーディション受けて…。でも最初は「ウチにメタルは要らん」って落とされてん。でもずーっとチラシを配りに行ってたから、加藤さんには良くしてもらってた。定期的に演奏するようになったのは堺に移転してからだから、ほんと最近。
-ハハハ!(笑)そのファーストインプレッションから先日のTSUKA FESTだと思うと余計にあの日の光景が美しく思えます(笑)
TSUKA:ベアーズ(※難波にあるライブハウス。)もその頃オーディション落ちた。
-ハハハハ!(笑)ベアーズもオーディションありましたね。僕がベアーズの公開オーディション(※ベアーズに出演希望を送ったバンドが最初に出るライブ形式のオーディション。)受けた最後の世代かもしれないです。
僕と同じ日にオーディション受けたバンドも「しっかりしてるし、いいバンドやと思うねんけど、出るところウチじゃないと思うで」ってオーディション落とされてて。それ聞きながら「ヒエ~」って思った記憶があります。少し前まではライブハウス毎にこういう出演者、という風に明確に住み分けがなされてた印象があります。今は別に誰がどこに出ようがいいって感じになってきていますよね。
TSUKA:いや~どうやろう?今でも住み分けがあるのはあるんじゃないかな?ただ昔はもっと顕著だったかな、僕はあんまりキタのライブハウスは出たことなかったし。キタのほうのバンドがミナミに来て当たる機会も無かった。向こうは向こうというか…なんちゅーか、キタのバンドは知性的な、とか思っていた(笑)最近になっていろいろ交流が生まれて面白くなってるね。
-こちとら野生ですからね(笑)
僕がブッキングになる前にFUZZに出演されたことは?
TSUKA:FUZZ無い!だから最初西岡くんが呼んでくれたブッキングの日はめちゃくちゃ印象に残ってて。バンド同士がライブハウスの裁量で出会って、ハレルヤ(※堺が地元のロックバンド)チームと仲良くなって。ブッキングライブに出る理由って、きっかけ探しやと思ってるから。1回、2回会っただけではピンと来てなかった人でも、3回目には「あ!なるほどな」って思うこともあるし。いいきっかけをもらったなぁって今でも心に残ってる。それまでは「あんな上品なライブハウス絶対出えへん!」て思ってたけど(笑)
-全然上品ではないですけど(笑)
TSUKA:ちょうどこないだ高校の同級生と連絡しとって「田舎(※かつてFUZZの上にあった居酒屋)の下のライブハウスでライブしたで!」って言って。「田舎ってまだあるん!?」って言ってたけど残念ながら田舎はもう無いね。FUZZは変わらずあってよかった。
-上の居酒屋さんはちょくちょく入れ替わりますね。それが今や企画(・2023年12月15日(金))まで組んでもらえるようになって…ありがとうございます。
自分で聞くのもなんなんですが…FUZZで企画やろうって思ってくれたのはどういう部分だったんでしょうか?
TSUKA:FUZZが遊び場になるビジョンがあるからかな。僕にとってHOKAGEも戦国もそうやねんけど「こんな面白いライブハウスあるよ~」っていうのは発信し続けてたい。イベントをやるっていうのは一番ダイレクトに「自分だったらココではこういう遊び方する」っていうのを提示できるから。アラヤン(※バビロンブレイカーズのボーカリスト)も多分おんなじ事思ってるんちゃうかな。
-バビロンブレイカーズもこないだイベントをしてくれました。エントランスでホルモン焼きを焼いたり、DJも呼んだりとスペースと設備をフル活用してくれてうれしかったです。
TSUKA:あと12月15日に関しては#STDRUMS(※この日TSUKAMAROと共催するドラマー。世界各国でゲリラ演奏を行っているほか、平沢進のバックで演奏する等活躍している)がFUZZでやってみたいって要望があって。#STDRUMSのユージってヤツやねんけど、もともとローズローズっていう仲良しのスラッシュメタルのバンドに、彼が18歳くらいの時に入って。名古屋で初めて対バンして、んでその時の打ち上げで、揉めたっていうか、セパルトゥラ(※ブラジルのスラッシュメタルバンド)のリフの解釈で「それはそうじゃないだろ」みたいなので言い合いになって。「じゃあ今からスタジオ入って確かめるか」ってなって、2人で打ち上げ抜けて名古屋のスタジオ行って、楽器レンタルしてセッションをしたっていう出会いがあって、そっからの友達で。
-めちゃくちゃいい出会いですね!#STDRUMSのユージさんは何故FUZZを気にかけてくださってたんでしょう?
TSUKA:わからへん(笑)けど何かのアンテナに引っかかったんやろうね。
-ハハハ(笑)僕もその日はコロコロボンボンズとして出演させていただくので、気合い入れて臨みます!よろしくお願いします!
TSUKA:せっかくFUZZやったら堺のバンド出てほしいなって思って、ハレルヤと。なんか自分の中でFUZZの立地があまりにも自分の青春やからちょっと…思い出がありすぎる補正もあるかもしれへんけど、やっぱFUZZにみんな来たら面白いんちゃう?と僕は思ってる。
-たくさん人来てくれますように…!
ちなみにこのインタビューが公開される頃には1月13日(土)のアシスタンツ(※大阪で活動するツーピースバンド)とのツーマンも発表されてるかと思うのですが、僕の中で上杉さん(※アシスタンツのGt&Vo)とTSUKAさんは関西バンドシーンの人間国宝TOP2だと思っていて、勝手ながら組ませていただきました。アシスタンツとは何かエピソード等ありますか?
TSUKA:上杉くん、実はあんまり最近まで絡みなかって「上杉くんやな」ってなったのはイクイップメンツ(※USGKZ & the equipments、上杉さんのソロで、エレキギター、歌、ドラムセットを一人でこなすワンマンバンド)で。たまたま、HOKAGEに遊びに行った時がイクイップメンツのファーストライブで、話したら僕の古いギタリストの友達が上杉くんの幼なじみやったりでめっちゃ盛り上がって、そっからかな。イクイップメンツはめっちゃ追いかけてた。
-USGKZ & the equipments、あれとんでもなかったですよね(笑)僕もよくPAしていたんですけど、右足はバスドラ、左足はスネアをキックペダルで踏みながらギターを弾いて歌う。ギターもエフェクターちゃんと並べてるんですよ!ビックリ人間ですよ。それだけでもとんでもないのに、ある日「今日からこれが増えます」ってシンバルを持ってきて、一体どうするんだ…?と思ってたらキックペダルを踏み替えて、からくり仕掛けみたいに鉄の棒がシンバルを叩く装置みたいなのを使ってて…(笑)
TSUKA:僕もスタジオ一緒やったから、その経緯はよく見てた(笑) そっからドラマー入れてアシスタンツにするって、初めて聞いた時は「えー!?」って思った。イクイップメンツがすごい好きやったから。アシスタンツは、もともとは上杉くんとアシスタンツってことで、いろんなドラム叩く想定のユニットやったみたいやけど。
-もはやAGYAさん(※アシスタンツのドラマー)以外考えられませんよね。そのツーマンもとっても楽しみにしています!では今日は、ライブ終わりに長々とすみません。本当にありがとうございました!
TSUKA:そう、今のアシスタンツ見てたら、アシスタンツになって良かったな、と思ってる。僕もめっちゃ楽しみ。今日はありがとう!
ライブ情報
2024.1.13(Sat.) 三国ヶ丘FUZZ
「TSUKAMARO × アシスタンツ」
OPEN 19:30 / START 20:00
TICKET ¥1800 +1D
TSUKAMARO / アシスタンツ